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有明筑後川大橋の橋梁詳細設計

構造/保全
発注者

国土交通省 九州地方整備局 福岡国道事務所

期間

2012年11月~2014年9月

受賞

令和3年度土木学会田中賞(作品部門)
国土交通行政功労表彰(事務所長表彰 業務・個人部門)

九州一の大河である筑後川を渡河する「鋼単弦中路アーチ橋」の橋梁詳細設計を実施。選奨土木遺産であるデ・レイケ導流堤の上に架橋する特殊な構造物のため、構造や景観などについて議論を交わしながら設計を行いました。橋梁は、風景に調和し引き立てる美しい姿をしており、準主役級の役割を果たしています。


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歴史遺産に寄り添い、風景全体を引き立てる、
国内初の「2連の鋼単弦中路アーチ橋」を設計する。

有明筑後川大橋は、九州一の大河である筑後川を渡河する全長1080mの橋梁です。本橋は、2021年3月に開通した有明海沿岸道路の大川東IC〜大野島IC間において、福岡県大川市に位置しており、周囲には選奨土木遺産であるデ・レイケ導流堤や、国指定重要文化財である筑後川昇開橋が存在しています。
本橋は、デ・レイケ導流堤の上に架橋するという極めて特殊な構造物であり、設計・施工にあたっては、橋梁設計検討委員会を設置し、上部・下部構造や耐震構造、景観、施工、維持管理手法など多方面にわたり、慎重に協議を進めていきました。
なかでもデザインについては、周辺風景や歴史遺産と共存し、調和し、引き立てるものとするべく、張出し長を5.1mに拡大し、アーチ断面の変断面や吊り材のクロス配置、色彩とさまざまな点において工夫を凝らしています。このような「2連の鋼単弦中路アーチ橋」は国内初の取り組みであり、広がりのある平坦な地形の中で、昇開橋やデ・レイケ導流堤についで、準主役級の役割を果たし、風景全体を引き立てあっていると評価されています。「横への広がり感」や「河川を軽やかに跨ぐ爽快感」という設計コンセプトに沿ったデザインを実現することができました。

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地元住民との合意形成や維持管理への配慮など、
需要が高まる橋梁の架け変え業務に関するノウハウを蓄積。

架橋位置周辺は日本有数の軟弱地盤であり、その対策として、過圧密領域における地盤の即時・圧密沈下量の算定と設計への反映、基盤工の動的解析による耐震設計、杭の載荷試験による支持力や水平抵抗特性の設定・設計を行いました。また、デ・レイケ導流堤に橋脚を設置するにあたり、歴史遺産の価値を守るため、機能や形状に配慮しています。また、地元住民等との円滑な合意形成に向けて、オープンハウスを実施。設計の進捗や経緯、結果についてまとめた報告書をホームページで公開したほか、当時はまだ発展していなかったBIM/CIMを活用した施工ステップの見える化も行いました。維持管理性の向上という面でも、構造上重要な箇所へのアクセスや、維持管理時の導線確保や容易性に気を配っています。
本橋は、公益社団法人土木学会が主催する、令和3年度土木学会田中賞(作品賞)を獲得。同年度は、多摩川スカイブリッジとともにダブル受賞となりました。昨今の社会情勢をふまえると、橋梁の架け替えや大規模更新などの業務は、今後ますます増加していくことが予想されます。橋梁設計において、以前よりも既存環境・景観や既存構造物との関わりが重要となってくる中で、本プロジェクトは、今後の業務においても有効に活用・発展できるものと考えています。

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