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自治体版ECI方式を活用した橋梁メンテナンス事業

アセットマネジメント ECI方式
発注者

京都府相楽郡和束町

期間

2020年5月~2022年10月

老朽化が進むインフラ整備に向けて法改正が進む中で、基礎自治体においては担い手や財源の不足等が問題視されていました。そこでOCは奈良県田原本町にて産学官共同研究で「新しいECI方式」を設計。さらに京都府相楽郡の和束町にて、現場技術支援も組み込んだ包括的民間委託について企画提案を行いました。


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加速度的に老朽化が進む橋梁に対応するため、
発注者の負担を軽減する「新しいECI方式」を設計。

日本では、高度成長期以降に整備したインフラが急速に老朽化しており、建設後50年以上経過する施設の割合が年々上昇しています。それに伴い、公共工事の品質確保を目的として、2016年には「公共工事の品質確保促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正品確法)、2017年には「国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン」が策定されるなど、新たな契約方式が提示されました。これにより事業の上流から関わりやすくなり、かつ過度な価格交渉を防ぐことができるようになりました。
しかし基礎自治体においては、技術系職員や現場の担い手、予算が不足しており、地域の維持管理体制に懸念を抱えたまま保全事業を進めている状態でした。
奈良県の田原本町では363橋ある橋梁のうち39橋が対策の必要性ありと判断されているのに対し、修繕および架け替えについて、工程・品質・安全性の確保への懸念、予算・職員負担の増大、非効率な事業展開など多くの課題が浮上していました。現状を鑑みて「新しい契約方式を活用しなければ事業推進は困難」と判断し、産学官共同研究で制度設計を行うことを決めました。
従来のECI方式において発注者は、施工者からの技術提案を判断する高い技術力が求められるほか、契約を複数回結ぶ手間が生じ、価格交渉も行わなければいけません。加えて、施工監督の役割を担う必要もあり、技術者が少ない自治体には負担が大きい仕組みでした。
一方、制度設計を行ったECI方式(田原本町仕様)については、OCが発注作業の補助や施工確認等のコンストラクションマネジメント的な役割を担うことで、発注者の負担を軽減。品質向上・工期短縮など、橋梁保全事業の適切な進行を支援します。

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現場技術業務とECI方式のハイブリット型、
産民官共同で持続的な修繕・架け替えを行う。

京都府相楽郡の和束町では、176の橋梁を管理しています。そのうち1953年の南山城水害、台風13号による災害復旧で和束川に架橋された9橋は60年以上が経過しており、経年劣化による修繕および架け替え時期を迎えていました。このような状況下ながら、対応する職員は実質2名であり、田原本町と同様の課題を抱えていました。
そこで、田原本町での共同研究にて委員長を務めてもらった大阪公立大学の山口教授と共に、和束町での産学官共同研究に関する企画提案を行い、町長からの了承を獲得。架け替え対象である祝橋をフィールドに、和束町・大阪公立大学・OCの共同研究をスタートさせました。プロジェクトでは「持続性」をキーワードに、メンテナンスを担当する地元企業の育成も意識。設計段階から施工者が参画するECI方式と、現場技術業務を組みこんだ包括民間委託について、実務での成果をふまえながら検証を行いました。
2022年10月には祝橋の旧橋撤去から新橋建て替えまでを完了させたうえで、ECI方式(田原本町仕様)と現場技術支援を掛け合わせた「橋梁架け替え事業におけるハイブリット型包括的民間委託に関するガイドライン(案)」を策定しました。和束町のような人員が不足している基礎自治体において、橋梁の架け替えは一大事業であり、円滑に進めるためには民間のサポートが欠かせません。今回のプロジェクトでは、基礎自治体が抱える課題を解消しながら、職員や地元施工者の育成にも寄与しつつ、事業を成功させることができました。この先、ますますの人員不足が考えられる中で、ハイブリット形式による成功例ができたことには大きな意義があるといえます。
今後、和束町においては、今回策定したガイドラインを活用しつつ架け替え・修繕を実施。モニタリング委員会を設置し、毎年1回は活用効果の検証や修繕案の検討を行い、ブラッシュアップしていきます。発注者と設計者、施工者が密に三者連携を行っていければ、架け替えだけではなく、維持・修繕事業も含めた保全事業全般において円滑な事業推進が可能になります。今回、和束町での先駆的な取り組みを通して得た経験や知識をもとに、全国の基礎自治体への普及活動も進めていく予定です。

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