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大井坂下公園インクルーシブな遊び場づくり

景観・ランドスケープ/歴史・文化 インクルーシブ
発注者

品川区 防災まちづくり部 公園課

期間

2019年8月~2022年3月

品川区より「子どもたちのアイデア等を活かした公園づくり基本構想委託」を受託。区内の小学生を中心としたワークショップや、当事者へのヒアリングを行いました。そこで出たアイデアや意見を活かし、ユニバーサルデザインに配慮された「インクルーシブな公園」として、2022年3月に大井坂下公園をオープンしました。


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障がいを持つ子も楽しめる「ユニバーサルデザイン」に配慮した、
「インクルーシブな公園」を、区内の小学生と共に考える。

品川区の「区民と区の協働で、『わたしたちのまち』品川区をつくる」という基本構想に基づき、広く区民に愛される公園を整備するための計画案づくりを行っています。
2019年から実施されている「子どもたちのアイデアを活かした公園づくりのワークショップ」では、小学生自身が公園を計画するというコンセプトのもと、障がいのある子どもたちも楽しめる、ユニバーサルデザインに配慮された公園・遊具の整備に向けアイデアを考えていきました。
本事業では、ユニバーサルデザインであることに加え、「インクルーシブな公園」であることも重視しています。そのため、検討過程において、設計者と当事者が一緒になって考えることを基本思想としました。まず、区内の小学生を集めたワークショップを数回にわたり開催。取り組みを通じて、子どもたちにユニバーサルデザインについて学びを与えながら、公園づくりのアイデアを募っていきました。各ワークショップは「知る・学ぶ」「体験する」「考える」という3つの視点を軸に、子どもたちが自ら気づくことに重点を置いた内容になっています。
例えば「知る・学ぶ」機会として、東京都立品川特別支援学校にご協力いただき、支援学校の様子や生徒の好きな遊び、苦手なこと等をクイズ形式で学びました。障がいを持つ子どもの中には、順番待ちが苦手な子もいれば、大きな音が苦手な子もいます。それぞれの特性を知り、誰しもが使いやすい公園を考える機会となりました。第3回のワークショップでは「体験する」をメインテーマに、世田谷区立二子玉川公園で車いすやアイマスクを使った障がい疑似体験を実施。この公園には、車いすでも使用できる机タイプの砂場や水遊び場があるため、そのような遊具を実際に体験しながら、必要な設備や安全面における工夫などを考えてもらいました。「知る・学ぶ」「体験する」を経て、第5回ワークショップは子どもたちをいくつかのグループに分け、アイデアカードをもとに公園計画を「考える」機会としました。公園全体を「みんなのあそびば」「わくわくゾーン」「見守りゾーン」「休憩ゾーン」の4つに分け、遊具以外の休憩施設も配置するよう意識づけを行いました。
並行して、障がいを持つ子どもやその保護者、外国から来た親子などに対するアンケート調査やヒアリングも実施。休憩施設や出入り口に対する工夫といった、遊具以外での気づきを多く得られました。聴覚・視覚・身体・発達など、異なる障がいについて、各人の特性の違いや求めること、公園の利用法を知ることもできました。

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国内ではまだ発展途上の「インクルーシブな公園」づくり、
第一号となる大井坂下公園が2022年3月にオープン。

本取り組みをベースに、品川区立大井坂下公園の設計・工事を進行。インクルーシブな遊び場を実現するために、海外遊具メーカーにも協力を得ながら安全性の確認を行いました。設計においては、子どもたちのアイデアをそのまま取り入れるのではなく、核となる「考え方」や「要素」を取り入れることを前提にしています。完成した公園設計案は、ワークショップに参加した子どもたちにお披露目し、アイデアが実際の公園づくりにつながっていることを提示しました。
子どもたちのアイデアを取り入れた公園第一号となる大井坂下公園は、2022年3月にオープン。同月に、ワークショップの集大成として「工事体験会と完成お披露目会」を開催しました。ワークショップ参加者を対象に、測量やモルタルを使った左官体験、インターロッキングブロックを使ったパズルなどの工事体験のほか、参加した子どもたちが描いた絵を集め、モニュメントとして公園メイン出入り口に設置。そちらの除幕式も行われました。お披露目会には区内の児童発達支援事業所で働く職員の方や障がいを持つ子どもたちにも参加してもらい、実際に公園を使ってみて「良かった点」「気になった点」をアンケートにご回答いただきました。ここで得られた意見は、今後の公園整備にて活用される予定です。
区内の子どもたちや障がい当事者など、公園を実際に利用する方々と一緒に公園づくりを行うことができ、「ユニバーサルデザイン」のみではなく「インクルーシブな公園」づくりを実現することができました。明確な定義がされているユニバーサルデザインに対し、インクルーシブな公園については、まだまだ共通の認識や理解が定着していません。今回、他自治体による視察等もあり、全体の進行や実際に整備された空間が、他地域でのインクルーシブな公園づくりの参考として広まりつつあります。事業者だけではなく、当事者が公園づくりに参画することで、より地域に利用され、愛される空間を生み出すことができます。今後も、一つひとつの取り組みや検討内容を蓄積し、インクルーシブな遊び場づくりや、多様な方が参画できる公園づくりを展開・支援していきます。

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