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地域の歴史をつなぎ愛着を育む水辺のデザイン(川原川・川原川公園)

景観・ランドスケープ/歴史・文化
発注者

岩手県 陸前高田市

期間

2012年8月〜2021年3月

受賞

2022年度土木学会デザイン賞 最優秀賞

本プロジェクトは、東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市の復興業務として行われた河川・公園整備です。OCはCMR構成員として市の復興業務に深く関わるとともに、川原川公園の基本設計に携わり、復興市街地の魅力的な空間創出に貢献するため、被災前から続く地域の歴史や文化、記憶を継承するまちづくりを支援しました。


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復興市街地をより魅力的な場所へ、
川とまち、歴史や文化、記憶をつなぐデザイン。

東日本大震災で甚大な被害を被った岩手県陸前高田市。この地区は復興事業により、宅地地盤全体を嵩上げする土地利用計画が策定されました。新たに形成される市街地には、被災前から続く地域の歴史や文化、記憶を継承するまちづくりが求められます。そこで、復興CM方式におけるCMR(コンストラクションマネージャー)として市の復興事業に深く関与していたOCが、川原川公園の基本設計ほか、川とまちの一体的なデザインの検討やプロジェクトの全体調整を担当。復興市街地の魅力的な空間創出を提案しています。
本プロジェクトにおいては、嵩上げによって3倍も深さを増した川とまちとの高低差を解消する必要がありました。岩手県が管理する河川(川原川)の改修と、陸前高田市が管理する河川沿いの公園(川原川公園)とが一体となる整備を進めるため、岩手県や陸前高田市、デザイン監修者、河川設計担当コンサルタント、そして公園の設計者であるOCで合同会議を行い、細かな調整をしながら進めていきました。合同での現地調査の後、全体の方向性を協議。川と公園の境界を決めない、「川でもあり公園でもあるまちの空間」を創造し、地域になじむ一貫したデザインとして取りまとめています。

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被災前の風景や伝統を大切にした空間をつくり、
地域の方々の愛着を醸成し、来訪者へ価値を伝える。

検討過程においてOCは、さまざまな縮尺の検討用模型を作成し、関係者や地域住民などと具体的なイメージを共有しました。互いに意見を引き出し合いながら検討を進める中で、被災前に街路があった場所を示すように潜り橋を配置する、被災を免れた河畔林をデザインに計画的に取り組み保全するなどのアイデアが生まれました。他にも、被災前に市内で行われていたお花見を継承する場や、市民にとっての日常的な水辺の創出など、地域の歴史や文化、記憶をつなぎ、愛着を育んでもらう方法を綿密に話し合い、デザインへと落とし込んでいます。
公園と河川は2021年に竣工。新たな市街地には、被災前の歴史や風景をつなぐ空間をつくり上げることができました。また、整備の過程で川原川は、有志によるファンクラブが組織される、保育所で川原川をテーマにした歌が生まれるなど、地域に親しまれる場となっています。これらの内容が評価され、本プロジェクトは「2022年土木学会デザイン賞 最優秀賞」を受賞しました。
東日本大震災の復興事業において、早期復興のためスピード感のある事業実施が求められる中、地域の魅力を向上し、地域の愛着の醸成に寄与するプロジェクトを実現することができました。今後も、災害からの復興という枠にとらわれず、全国各地の拠点の整備においても、地域の魅力や個性を引き出したデザインを提案していく中で、地域の方々の愛着を醸成し、来訪者にとっても魅力的な空間を創出することで、定住・交流人口の増加に貢献し、地域活性化へとつなげていきます。

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