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土砂洪水氾濫対策(シャッター付き砂防堰堤)施設設計

砂防 DX
発注者

国土交通省 近畿地方整備局 紀伊山系砂防事務所

期間

2020年3月~2021年3月

受賞

近畿地方整備局 局長表彰

紀伊半島大水害により大規模な土砂生産が発生。該当地域においては、近年多発している「土砂洪水氾濫災害」が危険視されていました。そこでOCは、国内での導入例が少ない「シャッター式砂防堰堤」を計画。災害対策に加え、環境負荷や生態系にも配慮した堰堤の検討を行いました。


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Point1

国内で数少ない「シャッター式砂防堰堤防」で
積極的な土砂のコントロールを可能にする。

2011年に起こった紀伊半島大水害により、大規模な土砂生産が発生。河道内に堆積した土砂が移動することにより河床上昇が引き起こされ、下流にある集落において浸水被害が生じる危険性が浮上しました。他の地域においても、山地で生産された土砂により河床が上昇し、下流部分で浸水被害が起こる「土砂洪水氾濫災害」が多発しており、同様に対策が求められています。
そこでOCは、先に述べた大水害の影響を受けた、紀伊山系砂防管内の神納川流域にて、積極的な土砂のコントロールが可能な「シャッター式砂防堰堤」計画を実施しました。従来のコンクリートスリット堰堤は、洪水時に土砂が流出する危険性があった他、流出量の能動的なコントロールはできませんでした。一方で「シャッター式砂防堰堤」は、状況に合わせてシャッターを開閉することで、土砂の堰き止めと流出防止を両立することが可能です。「シャッター式砂防堰堤」は日本国内での事例がまだまだ少ないですが、近年の事情も踏まえ採用を決めました。

Point2

環境負荷や河川の生態系にも配慮した、
効果的な堰堤とその運用法を検討。

プロジェクト内では紀伊半島大水害の降雨を再現した短期と中期の実績流量を用いて1次元河床変動計算を行い、再現性を確認しました。その後、再現したモデルの妥当性を評価したうえで、シャッターの全閉・全開・半開それぞれの施設効果を確認し、最適な運用法を検討。また、シャッター部材についても、ストックヤード位置や設置方法、土砂動態モニタリング案など現実的な運用に向けて調査を進めています。
堤体材料にはコンクリートと砂防ソイルセメント工法を採用することで、大礫・土砂を有効活用し、環境負荷を抑えた砂防堰堤を計画しました。基礎工は現地の地下水の浸透へ対応が可能な地盤補強工法を採用。河川の生態系保全にも気を配り、魚類の遡上のための階段式魚道設計も実施しています。
気候変動により、土砂災害が増えるなか、土砂の積極的なコントロールの必要性はますます高まっています。同時に、魚類の生息環境への配慮や環境保全に対する対応も行わなければいけません。今後も今回の事例と同様に、積極的な土砂のコントロールを実施し、近年多発している「土砂洪水氾濫災害」の軽減を図る設計を実施していきます。

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